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神奈川県のもっとも西にある山北町。丹沢山渓の山々が9割を占めるこの町は、水源の森に育まれる美しく美味しい水に恵まれています。この貴重な皆瀬川の湧水を使わせていただいて、蓼藍(たであい)を育て、生葉染めや食べる藍を楽しんだり、本場の徳島県から阿波藍のすくもを仕入れて藍建てを行ったり、藍から始まる山暮らしを楽しんでいます。
インディゴという青い色素をもつ植物で染める藍染は世界中に古くからありますが、土地によって使われる植物の種類は全く異なっていますし、泥染・発酵建て・本藍染などと呼ばれる染色方法も様々です。
中でもジャパンブルーと呼ばれた日本独自のにじみやムラは、蓼藍(たであい)という蓼科の植物の葉を夏に収穫し、「藍屋(あいや)」さんが冬の間に発酵させて「蒅(すくも)」にして保存し、それを「紺屋(こんや、こうや)」さんが染料が働く状態にする「藍建て(あいだて)」を行う…という日本ならではの方法でしか生まれない色合いです。
毎朝毎晩、藍のカメを混ぜて嫌気性の菌が繁殖するのを防ぎながら、藍の中の微生物を育てて染料を作る本格的な藍建ては、化学的な物を使わず木灰や消石灰、日本酒などを藍の状態を見ながら加えて整えていくという、非常に手間のかかる大変なものです。そこで、大なり小なり化学の力を借りてアルカリ化を早めたり、インディゴという合成の染料を混ぜることで安定した色を出す方法まで、現代ならではの様々な手法があります。
何にこだわり、何を大切にするかは、藍染を行う方の染めたいものや環境に応じて、最適なものを選ばれたら良いと思うのですが、i-caraでは「多くの人に気軽に楽しんでもらえること」「日本独自の色合いを感じてもらうこと」の2点を大切にしています。
藍染には消臭、抗菌などの効果があること、布を丈夫にしてくれることを昔から肌で感じていた日本人は、大切な人への思いを込めて祈りの気持ちで下着や普段着を何度も染め直していたのではないでしょうか。
その祈りのような思いを大切に、古着やシミがついてしまった布、飽きてしまった衣類などに絞り模様を入れて染め直してもらう”藍染体験”を軸にして、普段着の藍染をこの地域から広げていきたいと思います。
藍染体験の予定はこちらでもお知らせしますので、ちょっと山の中ではありますが、ご興味のある方は是非遊びにいらしてみてください。
藍担当 吉田洋子